コラムColumn
- 骨盤はテンセグリティー・システムでもあるんですね
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- 2013/05/18
- イメージとからだ
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こんにちは、稲田です。
ヒトを含めた多くの脊椎動物たちの筋骨格系はテンセグリティー・システムという形を維持する上でたいへん効果的な構造をもっています。
骨盤もまたこのテンセグリティー・システムによって形作られているんですね。
テンセグリティーというのは造語で、tension(緊張・張力)とintegrity(統合・完全性)の語を合わせて、デザイナーであるバックミンスター・フラーさんが考えだしました。
これは、重力がある状態で、張力のある構成要素の緊張とバランスによって、その形を維持しながら立っている構造のことをいうんですね。
このテンセグリティ・システムを採用すると、生物経済的な効率に優れているので、構造全体を使って力を吸収し、再利用ができるという長所があるんですね。
幼児の遊びのおもちゃでもこのしくみを用いたものがありますね。
圧縮部材である色のついた棒は互いに接触せずに、バランスのとれた張力部材であるゴムひもの連続する構造の中で浮かんでいる状態です。
手で圧縮すると形がたわみますが、手を離すと元の形に戻ります。
レンガの壁を想像してもらえますか?
1番上のレンガは2番目のレンガに支えられ、3番目のレンガは1番目と2番目を支えていき、最下部のレンガは上に乗っているすべてのレンガの重みを支えてその重量を地面に伝えます。
そして、この構造だけなら横からの力にはかなり脆いことがわかりますね。
通常の建物などは、圧縮構造で形を維持しているコンプレッション・システムなんです。
生物は進化の過程で、使用する材料が最小限で力学的強度や効率が最大になるような原理を取り入れてきたんでしょうね。
僕が最初骨格の解剖を学び始めた時、なんてもろい構造の上に人体は形作られているんだろうというイメージをもっていました。
こけたらすぐ折れそうとか、関節が押し潰されそうとか、脆弱な人体というイメージだったんです。
もしかすると多くの人もかつての僕のように、骨格はレンガ壁のような圧縮構造をしているものと感じているかも。
上からの重みを順々に下の部位が支えていて、それを筋肉が力で補強しているようなイメージを持っているのかも知れません。
人体がテンセグリティー・システムを表した構造なんだということがわかれば、また違ったイメージが作られます。
それは弾力性に富み、荷重がかかると構造全体がそれに合わせて少したわみ、負荷が過度にかかれば構造物全体に力を分散させてダメージを最小に防ぐよう働きます。
骨盤においても腸骨と仙骨の間にはたくさんの弾力性のある靭帯でつながれています。
そのひとつの仙腸靭帯は、両方の腸骨の間で仙骨がバンジージャンプをする時の命綱のような役目をしています。
自分が下に動く仙骨になって腕を上に上げて仙腸靭帯を表してみてください。
または、仙骨が腸骨の間で海に浮かぶブイのようにぷかぷか浮かんでいるとイメージしてもいいですね。
この前に仙骨はアーチのキーストーンであると書きましたが、テンセグリティー・システムから見ると、また違ったイメージになりませんか?