コラムColumn
- 進化の視点から「姿勢」を考えてみました
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- 2013/12/03
- からだのしくみ
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こんにちは、稲田です。
僕たち人間の「姿勢」について考える上で、進化の視点で見てみると参考になりことがあります。
ヒトの脊柱は後方に90度回転したために、足の上に頭部がくるように立つことができますね。
ヒト以外の哺乳類、たとえばゴリラでは仙骨が地面に対して水平で、腰椎は後弯しています。
ヒトの第5腰椎と仙骨の角度は鋭角となっているので、脊柱は地面に対して垂直に並んでいます。
つまり、腰仙角と腰椎の前弯ができて、この弯曲を補正するために胸椎の後弯ができたんですね。
筋肉の付き方もヒトとゴリラでは違いがあります。
中殿筋と小殿筋は、ゴリラでは大腿を伸展させるために使われるのに対し、ヒトでは大腿の外転筋として働きます。
腸骨がお椀型になったことで、殿筋や腸骨筋の接着面が増え、ヒトの直立姿勢の維持に重要な腸骨筋も大きくなりました。
ハムストリングスは、猿が二足立位をとる場合に体幹を安定させるために、緊張させます。
ヒトでは、立位でハムストリングスの持続的な収縮は必要ありませんね。
他にも、恥骨結合の垂直幅も、ゴリラのそれに比較して小さくなりました。
これは二足歩行の効率をあげるためでもあります。
そういえば、以前に猿回しの芸で、ずーと立ち姿勢で芸をする猿がいましたね。
その猿のレントゲン写真を撮ったところ、ヒトと同じように腰椎の前弯ができていたそうです。
つまり、二足立位によって背骨の弯曲が作られていくということですね。
ただし、お猿さんの場合、大殿筋とハムストリングスを使って立位を維持しているのは先ほど書いたとおりです。
これらの筋が常に緊張していないと、重力ラインが股関節の横軸よりもかなり前にずれてしまうんですね。
ヒトでは逆に、重力ラインは股関節の横軸よりもわずかに後方にあります。
人間は本来、立位で姿勢のバランスをとるのに、猿に比べて筋肉の負担が軽く、基本的に弛緩しているんです。
前に倒れないために、腓腹筋(orひらめ筋)の緊張はあるけど、他の筋肉はぶらさがっているだけなんです。
つまるところ、進化の過程でヒトに見られる変化は、陸にあがった動物の中でも最もエネルギー効率のいい立位姿勢、そして歩行ができるようになったことなんですね。
このように無理なく立位の姿勢をとるためには、『姿勢』について知っておくべき知識と、実際に体現を通して理解することが近道です。