コラムColumn
- 二足歩行が骨格全体に与える影響はかなり大きい
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- 2013/05/01
- からだのしくみ
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こんにちは、稲田です。
現在類人猿、いわゆる「大型ザル」に属する種はオランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ボノボ・ヒトの5種しかありません。
その中で私たちに最も近いいとこは、チンパンジーとボノボ(ピグミーチンパンジー)なんですね。
チンパンジーは今日では社会的な霊長類とみなされていて、複雑な行動をとることが明らかになっています。
チンパンジーを研究することで、かつて人間はこうだったに違いないと思われる特徴が数多く観察できます。
チンパンジーとヒトの共通の祖先に備わっていた能力を想像することもできるようになりました。
身体の構造の面では、ヒトは完全な二足歩行であり、チンパンジーは基本的に四足歩行で脚よりも長い腕を使って歩きます。(人間の腕は脚より短いですよね。)
ヒトの骨盤は短くて横幅が広く、腹部の器官を支えることができます。
チンパンジーの骨盤はヒトよりも大きく、縦に長くて幅が狭いですね。
その他の違いとしては、頭蓋骨の大後頭孔がヒトでは下に、チンパンジーは後ろ側に位置します。
二足歩行が骨格全体に与える影響はかなり大きいと言えます。
ところで、ヒトはどうして二足歩行が必要になったんでしょうね?
ヒトが立ち上がったのは、それが脳の発達に役立つからではないそうです。
アウストラロピテクスはほとんど二足歩行だったけれど、その脳はチンパンジーと変わらなかったようですから。
ということは、二足歩行は脳を発達させる可能性はあるけれど、二足歩行ならば脳が発達するという論理にはなりませんね。
「進化は必ずしも改善である必要はなく、単なる変化に過ぎない。」
要するにたまたまそうなった、というのがダーウィンの自然淘汰の理論が提起していることなんですね。
神の創造説を信じている人々からは今だにバッシングを受けているようですが。(^_^;)
では何故ヒトは二本脚で歩くような選択をしたんでしょうか?
定説があるわけではないけれど、赤道の密林より開けたサバンナの広大な環境に適応するためというのが最も妥当な仮説のひとつですね。
写真をみているだけでもイメージをかきたてられる、ジャン=バティスト・ド・パナフィユー著の『EVOLUTION 骨から見る生物の進化』は、ヒトの骨格を学ぶ上で進化という視点からヒントを与えてくれるいい本です。
骨から見る生物の進化【普及版】
その本の中で次のような記述がありました。ヒトは200万年近く前から優秀な長距離ランナーの特徴を示していた。
祖先の脳より大きい脳を持っていたので、初期の人類は、脂肪と蛋白質をより豊富に含んだ食べ物を摂る必要があった。
おそらく彼らにとって、大型の捕食動物が食事を終え、他の屍肉あさりがやってくる前に、ハゲタカが飛んでいるのをたよりに早く屍体を見つけることが重要だったのだろう。
彼ら旧人類は追跡猟を行い、獲物が疲れ果てるまで、長い距離を追いかけただろう。
そのため、われわれは歩くより走るのに役立つ長い脚を持っているのだと思われる。
そうであるなら最近のマラソンブームは、人類の二足歩行に至った原点回帰の現象かも知れませんね。