コラム

Column

「自然治癒力」と呼ばれる力について
  • 2021/04/16
  • 健康論

自然治癒力の発動


自然治癒とは、ほおっておいても体が勝手に病いを直してくれることだと解釈されていることが多いですね。

たとえば、転んで膝を擦りむいたとして、流水で洗って絆創膏を貼っておけばしばらくすると出血は止まります。

また何日かたつと、かさぶたができて下には新しい皮膚の細胞が再生して傷はふさがっていきます。

私たちのからだには、このような自然から与えられた、本来私たちに備わっている治癒へと向かわせる力があるのですね。



確かに怪我や風邪をひいた時などは、よほど重症ではない限りほっておいてもからだが勝手に治してくれます。

しかしまた一方で、ほっておいても何も良くならないといった症状や病いというものも存在します。

たとえば慢性の腰痛症。

何十年と腰の痛みに悩まされている方というのは結構いらっしゃいます。

腰の痛みが起こってからも、じっと我慢していればそのうちに良くなるだろう。

いつかそのうちにと期待しながら何年も症状が変わらないまま、だんだんと痛みがあるのが当たり前の状態になっている方。

この方には自然治癒力は働いてくれないのでしょうか?



そもそも症状って一体なんなんでしょう?

からだに現れる症状とは何?


私の例で恐縮ですが、先日あるお店で飲食をしたことがきっかけで食中毒症状を起こしました。

下痢に発熱、体のだるさ、頭痛、食欲不振などの症状で仕事を休んで2日間寝込みました。

発熱は5日間続き、頭痛とからだのだるさは下熱とともになくなりましたが、下痢は1週間続きました。



さて、この時に私のからだに現れた症状は消し去るべき悪者なのでしょうか?

実際にかかった体験者だからわかりますが、下痢も体のだるさもとても辛いです。

できれば早く元の楽な状態に戻りたい!そう思うのも無理ありませんよね。

そこで、解熱剤と下痢止めと頭痛薬を飲んで症状を抑えようとしたとしましょう。

症状が治ればそれでいいのだといった発想しかなければ、からだが持っている自然治癒力は全く何の役にも立たない存在となってしまいます。

つまり、治ったのは薬のおかげで、薬を使わなかったらもっと辛い状態が続いただろうと考えるのかもしれません。

実際のところは、薬を服用しないで回復したのですが。

(薬を否定しているわけではなく、適切なタイミングで最適な薬を使うことも必要なことです。たとえば一時的に抗生物質を使った方がいいこともあるでしょう。)

ここで、もう一度それぞれの症状について見てみましょう。

発熱は、細菌やウイルスに抵抗するために体温を上げて免疫力を高めるからだのしくみですね。

そして、発汗させることでからだに溜まった毒素を体外へ排出することと、皮膚から熱を放散させるよう働きます。

下痢は、腸についた細菌やウイルスそのものや、それらによって生じた毒素を体外へと排出するために起こります。

体のだるさは、無用にからだを動かしてエネルギーを消耗させないように防いでくれています。

食欲不振や胃腸の調子が落ちるのは、食べることを制限して胃腸を休ませ、消化に使われるエネルギーを節約することにつながります。

このように見てみると、からだに現れた症状は全て、からだの機能を回復させるために「自然治癒力」が働いてくれているまさにその見えない働きの現象そのものといえます。

これが私たちのからだに備わったいのちのしくみでもあるのですね。

この「自然治癒力」を助けるために取った私の戦略は、安静と水分補給と絶食とビフィズス菌の摂取、そしてイーマ・サウンド®︎でした。


自然治癒力ではない症状もある


さて、食中毒の症状を例にして症状とはまさに「自然治癒力」の発動による現象なのだと述べました。

しかし、ここで最初に出した慢性腰痛症の場合はどうなのかという疑問が出てきますよね。

果たして慢性腰痛症の腰の痛みという症状は、「自然治癒力」の現れなのでしょうか?

答えは、さにあらず、ですね。

急性の痛みという症状なら、危険信号としてのサインと捉えて、動かさないなどの治癒力の表現ととれますが、慢性の痛みの場合はもはや危険信号でもありません。

このような場合は、「自然治癒力」が発揮しにくい状態がいつまでも続いているわけで、そのために腰痛という症状が消えてくれないのです。

つまりどうなっているのかというと、からだのしくみを正しく使わずにある部分にだけ負担をかけ続けていたり、症状が教えてくれているメッセージに気づくことなく同じループの中にいたり、何も習慣を変えないで受け身の姿勢で過ごしていたりということが、「自然治癒力」の発動を阻害しているのです。

宇宙の叡智とつながる自然治癒力


症状について2つのケースを挙げて考えてみましたが、結局のところどちらのケースもキーワードは「自然治癒力」です。

これなくして、薬や手術で治ったというのも実は錯覚にすぎません。

私たちセラピストや治療家が行う施術という行為も、「自然治癒力」という大いなるいのちのしくみをサポートすることが本道であり、それ以外にはないのです。

「自然治癒力」はさらに大きな枠組みでは宇宙の叡智(ユニバーサル・インテリジェンス)に包含され、宇宙全体の全ての星たちをつなげている秩序と調和を生み出す力とつながっています。

そのようにイメージを膨らませると、からだに対する見かたが崇高で偉大で、聖なる器のように思えてきませんか?



病にいま苦しんでおられる方もいらっしゃるでしょうが、ぜひ一度いのちの大いなるしくみに意識を向けてみてください。

そんな気持ちの余裕はないよと仰るのなら、いのちのしくみを理解しているセラピストを頼ってみるのもいいかもしれませんね。

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