コラムColumn
- イメージが身体に与える影響は見過ごせませんね
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- 2015/09/15
- からだとこころ
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こんにちは、稲田です。
今日はイメージが身体にどんな影響を与えうるかについて書いてみます。
心の中に描かれたイメージが身体に影響を与えるということについては、多くの研究者によって証明されていますね。
私たちの日常生活においても、毎日そのことを経験しているはずなんですが、まだまだイメージの力のすごさは過小評価されがちです。
イメージを使えば自分でセルフケアできるよって患者さんに言うんですが、最初はキョトーンとされることが多いです。
イメージが身体に与える影響では、やはり病気との関連が一番わかりやすいでしょう。
がんのイメージ治療で有名なのが、カール・サイモントン博士です。
サイモントン博士は、リラクセーションとイメージ法のテクニックを使って、自分自身で病状の進行に影響を与えるサイモントン療法を提唱した人です。
がんの放射線治療を受けながら、放射線が自分のがん細胞に何百万もの小さな弾丸を浴びせているとイメージするんです。
さらに、その攻撃を受けたがん細胞が、健康な細胞よりも弱体化していき、損傷を回復できない状態のなるというイメージを頭に描きます。
今度は、免疫系の兵士である白血球が、死んだがん細胞に押し寄せ、肝臓や腎臓に運び込んで、体外に押し出してしまうところまでイメージするんですね。
その結果は、通常の放射線治療を受けた場合に比べてはるかに良い結果が得られたそうです。
個人的には放射線治療がいいとは思わないですが、
イメージを使うことで身体に変化を起すことができる一つの例として紹介しました。
なぜ、心の中に描いたイメージがこのように身体に影響を与えるかについては、脳の働きから説明することができます。
つまり、脳は
あるものについて記憶されたイメージは、人間の感覚に対して、そのもの自体とまったく変わらないほどの影響を与えることが可能なんです。
不思議に思われるかもしれませんが、
想像した出来事と実際の出来事を、身体が区別できていないのが事実です。
さきほどの例で、白血球が出てきましたが、他の研究者の実験では、特定の血球であるT型細胞だけをイメージさせて増やすこともできたそうですよ。
そう考えると、健康に関しては、できるだけ身体に悪影響をもたらすような思い込みやイメージは打ち払ったほうが良さそうですね。
人間は病気を創りだす能力があるし、逆に同じように健康な状態を創りだす力も備わっているといえないでしょうか。
では、今度は運動やパフォーマンスに関してイメージがどのように影響するかを見てみましょう。
みなさんは、ストレスホルモンって聞いたことありませんか。
不安や恐怖、いらいらなどの感情を覚えたときに血液中に放出されるコルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンなどの内分泌ホルモンのことです。
イスラエルで行われた実験例ですが、
兵士をいくつかのグループに分けて40キロの行軍をさせたんです。
あるグループは30キロ歩かせた後に、あと10キロだと伝えました。
あるグループは60キロ歩くと伝え、実際には40キロしか歩かせなかった。
またあるグループには歩いてきた距離を示す標識をみせるようにし、
他のグループにはどれだけ歩いたかまったくわからないようにしました。
さて、彼らのストレスホルモンのレベルにどんな違いがあったと思いますか?
実際に歩いた距離は、全員同じ40キロです。
つまるところ、兵士たちの身体の中の反応は、
現実そのものではなく、頭の中で描いたであろうイメージに反応していたことがわかったわけです。
イメージ法と運動能力の関係性は、かつての旧ソビエト連邦ではかなり研究されていました。
1980年のレイク・プラシッド冬季五輪大会では、
それぞれの種目で正確な身体動作や達成したい成績を頭の中で視覚化するという訓練を、練習全体の75%費やしたグループが一番よい成績を挙げたそうです。
米国のパフォーマンス科学研究所のチャールス・ガーフィールド博士は、『ピークパフォーマンス:ベストを引き出す理論と方法』の中でこの話を書いています。
ピーク・パフォーマンス—ベストを引き出す理論と方法
先にあげたイメージと病気との関係といい、イメージと身体運動との関係といい、身体とこころをつなぐ架け橋となっているもののひとつがイメージだと言えます。
イメージをうまく使いこなすと、身体の動きや生理的な反応にも変化を起こすことができそうですね。
坊ちゃん、おいらのかあちゃんのお腹をクッションだってイメージしてるでしょ。