コラムColumn
- 頭の骨は動かない?動く?
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- 2016/04/27
- からだのしくみ
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頭蓋骨は動くのか?
メディカル・ドクター(M.D)の先生がたまに治療にこられます。
私の治療院では、整体の手技のひとつで頭蓋テクニックを使っているんですね。
それで、頭を触っていると、ドクター曰く
「それは何をしてるの?頭の骨は動かないよ。」
とおっしゃるわけです。
そうなんですね、いわゆる西洋医学(アロパシー医学)では頭蓋骨は動かないと考えられているようです。
仙腸関節だって動かないと思われている節がありますよね。
代替手技療法や動きのメソッドを学ばれた方なら、仙腸関節が動くのはほぼ常識です。
でも頭蓋骨が動くというのはどうでしょう?
案外そのメカニズムについては知られていないのではないでしょうか?
頭蓋骨の動きを発見した人—サザーランド
1900年代初頭、オステオパシー医のウィリアム・ガーナー・サザーランド(William.G.Sutherland)が頭蓋の動きを発見し、治療に応用し始めたのですね。
それまでは、頭蓋の縫合は固くなり、骨化して動かなくなると思われていました。
現在でも、先のドクターのようにアロパシー医学では頭蓋が動くとは教えていないはずです。
でもオステオパシーやカイロプラクティック、日本の整体法の一部では、頭蓋骨の動きの調整は根本的な原因治療として重要視されています。
サザーランドは、最初頭蓋の中でも蝶形骨と側頭骨に着目し、「側頭骨ってなんだか魚のエラに似てるよなー」って思ったそうです。
エラに似てるなら、もしかして呼吸と関係するんちゃうやろか?
ていうような仮説を立てたわけです。
科学の研究ってこんな感じで仮説と検証をくり返すことで立証されるのですね。
もともとオステオパシー医学は、人体の体液循環をベースにおいた体系です。
サザーランドが頭蓋の動きが呼吸と関係し、それが脳脊髄液の循環と関係するのでは、と考えるに至ったのも必然だったのかもしれません。
その後、同じくオステオパシー医のJ.E.アプレジャーが、CST(クレニオ・セイクラル・セラピー:頭蓋仙骨治療)を開発しました。
またカイロプラクティックの世界では、メイジャー・ディジョネットがSOT(Sacro Occipital Technic:仙骨後頭骨療法)という独自の施術法を開発しています。
現在では、優れた治療家たちによってテクニックもさまざまに進化発展しています。
何で頭の骨は動かないと思われてきたのでしょう?
生まれたての赤ん坊は、まだ頭蓋骨の縫合が閉じていません。
頭のてっぺんを押さえたらぺこぺこしますよね。
だからあまり強く押しちゃだめですよ!
そして成長とともに縫合が閉じ、頭蓋骨というひとつの形になるのです。
いちいち名前はあげませんが、23個の骨で構成されていますね。
問題はそれらの動きを感じられるかですよね。
手足や首肩などの関節は目で見て、実際に動かそうと意識すれば動きますよね。
「ああ、指の関節は動いている、動かせる。」と認識できます。
かたや、それぞれの頭蓋骨はどうでしょうか。
頭頂部を右上に動かそうとか前頭骨を引っ込めたり出したりしようとしてみてください。
できませんよね。
ちょうど、指の関節の牽引という動きが、意識してできないのに近いでしょうか。
出来る人もいるかも知れないけど。。
顎を開け閉めしたら、こめかみのあたりが動くのを感じるよ。
眉を上にあげたらおでこの骨が動いてるんじゃない。
そう感じる方もいるかも知れませんね。
でもそれは、たぶん側頭筋や顔面の表情筋が動いているのを感じてるのでしょう。
頭蓋の骨の動きそのものを自分自身が感じることは実はむずかしいのですね。
だから、動かないと思い込まれてきたのではないでしょうか。
それともうひとつ、やはり死体解剖での思い込みもあるかと。
生きた生命体では動きがあっても、死ねば動きは止まります。
その死体のみの観察では動きはわからなかったのではと思います。
この頭蓋骨の動きは知ることができます
頭蓋骨の動きは、わかろうと意識して触ってみるとわかるようになります。
そして、動きが分かれば治療に使うことができるのですね。
そのためにも、まず頭蓋の動きとそれに連動する仙骨の動きのバイオメカニクスを知っておくといいですね。
次回は、そのあたりを書いてみたいと思います。