Column

「感じないようにしてきた」ことが、からだを硬くする ——緩まない身体の奥にある感情の話
  • 2025/06/11
  • こころと感情の整え方
力を抜きたいのに、抜けないことがあります

肩や首がいつも張っている。
背中がずっと固い。
呼吸が浅い気がする。
休んでも、どこか力が抜けきらない。

そんな状態が続いていると、
「年齢のせいかな」
「姿勢が悪いのかな」
「疲れがたまっているだけかも」
と思うことがあるかもしれません。

もちろん、そういう面もあると思います。
でも、からだの硬さは、それだけでは説明できないことがあります。

ちゃんとしようとすると、自然と気が張る。
弱さを見せまいとすると、胸のあたりに力が入る。
人に気を遣い続けていると、呼吸が浅くなる。
言いたいこと言えずに飲み込むと、首やあごが固くなる。

そうやって日々を過ごしているうちに、
そのがんばり方そのものが、からだに染みついていくことがあります。


がんばってきた人ほど、身体が緩みにくくなる


がんばることは、これまでのあなたにとって必要なことだったのだと思います。

ちゃんとしていたかった。
迷惑をかけたくなかった。
自分で何とかしたかった。
つらくても、簡単には弱音を吐けなかった。

そうやって踏ん張ってきた人ほど、
無意識のうちに、からだに力が入る癖がついていることがあります。

がんばることが悪いことではありません。
その力があったから乗り越えてこられたことも、たくさんあったはずです。

でも、その状態が長く続くと、

寝ても疲れが抜けない。
筋肉をほぐしても、またすぐ固くなる。

そんなふうに、ずっと気を張って生きてきた反応が、
身体に染み付いてしまうことがあるんです。

体は、感じなかったことを筋肉の緊張として抱えることがある


本当は傷ついた。
本当は悔しかった。
本当はさみしかった。
でも、そのたびに立ち止まっていたらやっていけなかった。

だから感じないようにした。
考えないようにした。
何でもないふりをした。

そういうことは、誰にでもあります。

ただ、感情を感じないようにしても、
それで何もなかったことになるわけではありません。

言葉にならなかったもの。
飲み込んだもの。
引っ込めたもの。

そうしたものが、

・肩が上がる
・胸が縮こまる
・みぞおちが固くなる
・あごを噛みしめる
・呼吸が浅くなる

といった形でからだに表現されることがあるのです。

体は、忘れたように見えることも覚えています。
だから、緩めたいのに緩まないときというのは、
単に筋肉をほぐすだけでは足りないことがあるのです。

緩まない身体には、「まだ緩めない理由」がある


人の身体は、安心しているときには自然にゆるみやすくなります。
逆に、どこかで気を張っているときには、無意識に硬くなります。

その硬さは、あなたを困らせるためにあるのではなく、
今まで守ってきた結果として残っているものかもしれません。

まだ気を抜けない。
まだ倒れられない。
まだ感じてしまうとしんどい。

そんな反応がどこかに残っていれば、
身体はそう簡単には緩んでくれません。

だから、
「どうして私はこんなに固いんだろう」
と自分を責めるより、

「この私の体は、何を守ろうとしてきたんだろう」
と見ていく方が、回復の入口になることがあります。

安心できると、身体は「張り続けなくていい」を覚えていく


身体が緩みはじめるときは、
無理に脱力させたときではなく、
「もう力を抜いても大丈夫かもしれない」
と身体が感じられたときであることが多いです。

呼吸が少し深くなる。
肩の位置が少し下がる。
胸のつかえが前より軽くなる。
お腹の力がわずかに抜ける。

そうした変化は、とても小さいものです。
でも、その小さな変化の中に、
ずっと続いてきた緊張のパターンがほどけはじめる瞬間があります。

そのとき初めて、
「自分はずっと力が入っていたんだな」
と気づく人もいます。

緩むというのは、ただ柔らかくなることではありません。
張り続けなくてもいい状態を、身体が思い出していくことでもあります。


身体の硬さの奥に、感情が隠れていることがあります


ずっと硬かった場所が少しゆるむと、
そこに隠れていたものに気づくことがあります。

本当は悲しかった。
本当は心細かった。
本当は腹が立っていた。
でも、そのときは感じるより先に、耐えることを選んできた。

そうした感情は、
最初からはっきり言葉にできるとは限りません。

ただ、身体が少しゆるんだときに、
胸の奥が動く感じがしたり、
急に涙がにじんだり、
理由はわからないのにほっとしたりすることがあります。

それは、
身体の奥に残っていた反応が、ようやく動けるようになってきた、
ということなのかもしれません。

からだの硬さが気になるとき、
感情の面から整えることが助けになることがあります

慢性的なこわばりや、緩みにくさの背景に、
気の張りや感情の抑え込みがあるときは、
筋肉だけでなく、その奥にある感情も含めて見ていくことも必要になることがあります。

こころ解放セラピーは、
そうした身体の硬さの奥にある感情の反応に、無理なくふれていくための方法のひとつです。

もし、身体を整えてもまたすぐ戻ってしまう。
いつもどこか張っている。
力を抜きたいのに抜けない。

そんな状態が続いているなら、
からだの硬さを、感情の面から見ていくことが助けになることがあります。

編集者プロフィール
からだ道場【猫の穴】代表の
稲田 泰弘(いなだ やすひろ)です。

病院では「異常なし」と言われたけれど、
体や心のつらさが続いている。
その状態を、私は軽く扱いません。

からだ道場猫の穴では、
あなたの感覚を尊重します。
その上で、体と心の反応を一緒に確かめていきます。

このコラムは、
日々の現場や対話の中で感じてきたことを
ひとつの視点として綴っています。

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