Column

やさしい人ほど、疲れてしまう ——気を遣いすぎる心の整え方
  • 2025/10/06
  • こころと感情の整え方
「やさしい人ほど、疲れてしまう」

頼まれると断れない。
相手の気持ちを察して動いてしまう。

それは、あなたの魅力でもあり、大切な力でもあります。

でももし、そのやさしさが
知らないうちにあなたを消耗させているとしたら——

「やさしさの使い方」を、少しだけ整えるタイミングなのかもしれません。

やさしさ疲れの正体


ある女性のクライアントさまの話です。

仕事で、ずっと待っていた転勤のチャンスが巡ってきました。
新しい環境で挑戦できる、心に描いてきた未来。

ところが、ひとり暮らしのお母さまの顔が頭に浮かびます。

「私が遠くへ行ってしまったら、母は悲しむだろうな…」

その瞬間、
望んでいたはずのチャンスなのに、
心が固まって動けなくなってしまいました。

こうしたケース、実は珍しくありません。

相手の気持ちを大切に思うがゆえに、
自分の願いや本心を押し込めてしまう。

その結果、「決められない」「動けない」という形で、
心と体が固まってしまう、そんなお悩みは多いのです。

共感力が高い人ほど、抱え込みやすい


共感力が高い人は、
相手の感情を自分のもののように受け取ってしまいます。

だから、相手が落ち込んでいるとき、
自分までいっしょに沈んでしまうことも。

相手が不安だと、
自分まで不安になる。

そして気づくと、こんなふうになっていく。

・気を遣いすぎて疲れる
・断ったあとに罪悪感が残る
・自分の気持ちがわからなくなる
・胸のあたりが落ち着かない
・呼吸が浅くなる

「やさしさ疲れ」は、
心だけの問題ではありません。

抱えすぎが続くと、感情もからだも休めなくなっていきます。


境界線を持つことは、冷たさじゃない


ここで大切なのが、「境界線」という考え方です。

境界線を持つというのは、
人と壁を作ることでも、冷たくなることでもありません。

むしろ、こういうこと。

自分の中に、安心できる領域をつくること
相手の感情と、自分の感情を分けて受け止めること。

そうすると、

相手を思いやりながらも、
自分を消耗させ過ぎずにすむようになります。

「私は私」「あなたはあなた」に戻る


健やかな境界線があると、
こういう感覚が戻ってきます。

相手の気持ちは大切。でも、背負いすぎない。

助けたい気持ちはある。でも、引き受けすぎない。

自分の気持ちをきちんと伝えて断ってもいい。

自分を大事にする選択が、
関係を壊すとは限りません。

「今日は難しいの」、そう言えることは、
相手を大切にすることでもあります。

境界線は、関係を切る線ではなく、
関係を長く続けるための線です。

やさしさを失うためじゃなく、
やさしさを守るためにあります。

自分を守るやさしさへ


やさしさは、人と人を結ぶ力です。

けれど、そのやさしさのために
あなたが削れてしまったら、
本当に大切なものが見えなくなってしまう。

「やさしさを持ちながら、自分も守る」

それは矛盾することではなく、
両立できる在り方です。


まずは今日、ほんの小さくでいい。

「これは私の課題かな?」
「これは相手の課題かな?」

そうやって一度立ち止まって、胸や呼吸の感じを確かめてみてください。
それだけでも、消耗していた流れは変わり始めます。


こころとからだは、いつもつながっています。
そして必要なときは、ひとりで抱えなくていいのですから。
編集者プロフィール
からだ道場【猫の穴】代表の
稲田 泰弘(いなだ やすひろ)です。

病院では「異常なし」と言われたけれど、
体や心のつらさが続いている。
その状態を、私は軽く扱いません。

からだ道場猫の穴では、
あなたの感覚を尊重します。
その上で、体と心の反応を一緒に確かめていきます。

このコラムは、
日々の現場や対話の中で感じてきたことを
ひとつの視点として綴っています。

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