Column

閉じ込めた気持ちが、今の反応をつくっている——感情と思い込みを見つけて解放していくこと
  • 2024/05/01
  • こころと感情の整え方
「もう気にしていないはずなのに、また同じことで苦しくなる」
「頭ではわかっているのに、反応が止まらない」
「頑張っているのに、なぜか生きづらい」

そんな感覚を抱えることはないでしょうか。

人は、意識していることだけで生きているわけではありません。
自分ではもう終わったと思っていることが、心やからだの奥に残っていて、いまの反応を動かしていることがあります。

それは、昔の出来事そのものが残っているというより、
そのとき感じきれなかった感情や、そこでつくった思い込みが残っている、ということです。

見えていないところに、反応のもとがある


たとえば、

傷ついた経験。
言えなかった気持ち。
我慢して飲み込んだ怒りや悲しみ。

また、

「こうあるべき」と信じてきた価値観。
大人になるために閉じ込めた、子どもの頃の本音。

そういうものは、過去のこととして片づいたように見えても、
実際には心やからだの深いところに残っていることがあります。

そしてそれが、ある場面になると反応として出てくる。

人の顔色が気になりすぎる。
必要以上に自分を責めてしまう。
断りたいのに断れない。
本当は嫌なのに、合わせてしまう。

そんな反応の背景に、見えていない感情や思い込みが隠れていることは珍しくありません。


思い込みは、自分を守るためにできたものでもある


思い込みというと、悪いもののように聞こえるかもしれません。
けれど最初から自分を苦しめるためにできたわけではないんです。

たとえば、

嫌われないようにしなければ。
ちゃんとしていなければ。
弱音を吐いてはいけない。
迷惑をかけてはいけない。
頑張らなければ価値がない。

こうした思いは、そのときの自分を守るために生まれたもの。

でも、その守り方が今の自分に合わなくなっていることがあります。

もう必要のない鎧を着たまま生きていると、息がしにくくなる。
本音がわからなくなる。
何をしても楽にならない、ということも起きてきます。

だから大切なのは、思い込みを持つ自分を責めることではありません。
それがどこで生まれたのかを見つけて、もう役目を終えたものは解放していくことです。

感情を抑えたままだと、反応は残り続ける


感情も同じです。

悲しかった。
悔しかった。
怖かった。
ほんとは寂しかった。

でも、そのときは感じる余裕がなかった。
感じたら立っていられなかった。

そういう感情は、なかったことにはなりません。
押し込められたまま、別の形で残っていきます。

緊張しやすくなる。
呼吸が浅くなる。
同じ場面で強く反応する。
理由はわからないのに、胸がざわつく。

つまり、感情は消えたのではなく、形を変えて残っていることがあるのです。

だからこそ、心の深いところにある感情や思い込みを見つけて、解放していくことには意味があります。
それは過去を蒸し返すためではなく、いまの自分を縛っているものを終わらせるためです。

言葉だけでは届かない層があります


こういう話をすると、
「じゃあ、ちゃんと考えて整理すればいいのか」
と思う方もいるかもしれません。

もちろん、言葉にして理解することは大切です。
でも、それだけでは届かないこともある。

理由はわかっている。
何がつらかったかも説明できる。
それでも反応が変わらない。
同じ苦しさがまた出てくる。

そんなことはよくあります。

なぜなら、残っているものは頭の中の情報だけではないからです。
感情の記憶として、身体の緊張として、神経の反応として残っていることがある。

だから、深いところにあるものに触れるには、言葉だけでなく感覚の助けが必要になることがあるんです。

安心できること。
呼吸が通ること。
からだの力が抜けること。
張っていたものがほどけること。

そういう変化を通して、自分でも気づいていなかった感情や思い込みが見えてくることがあります。
見えてきたら、そこから解放していける。
その流れが、心の深いところを整えていくのだと思います。

解放していくことは、自分を取り戻すこと


抑え込んできた感情や、長く握りしめてきた思い込みを解放していく。

それは、

無理を無理と感じられること。
嫌なことを嫌だとわかること。
安心して息ができること。
自分の感覚で選べること。

そういう当たり前の力を、取り戻していくことです。


長いあいだ無理を重ねてきた人ほど、自分を休ませたり整えたりすることに、どこか後ろめたさを感じてしまうことがあります。

でも本当は逆で、見えないまま残っている感情や思い込みに気づき、それを解放していくことこそ、自分の人生を生き直していくための大事な働きなのだと思います。

頭ではわかっているのに変えられない。
同じ苦しさを繰り返してしまう。
そんなときは、意志が弱いのではなく、まだ残っているものがあるのかもしれません。

その見えていないものを見つけること。
そして、もう抱え続けなくていいものは解放していくこと。
そこから、自分らしく生きる力を取り戻していくことにつながるのだと思います。

※本記事は2026年3月にリライト・再編集しています。
編集者プロフィール
からだ道場【猫の穴】代表の
稲田 泰弘(いなだ やすひろ)です。

病院では「異常なし」と言われたけれど、
体や心のつらさが続いている。
その状態を、私は軽く扱いません。

からだ道場猫の穴では、
あなたの感覚を尊重します。
その上で、体と心の反応を一緒に確かめていきます。

このコラムは、
日々の現場や対話の中で感じてきたことを
ひとつの視点として綴っています。

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