Column

がんばれる人ほど、なぜ慢性疲労が抜けなくなるのか
  • 2025/07/02
  • 症状・からだのサイン
朝起きたときから、もう疲れている。
休んだはずなのに、体が戻ってこない。
何をしてもだるくて、頭まで重い。

そんな慢性疲労の感覚を抱えている方は少なくありません。

でも、そういう方ほど
決して怠けているわけではないことが多いのです。

むしろ、

人に頼る前に自分で何とかしてきた人。
つらくても弱音を飲み込んできた人。
ちゃんとやろうとして、ずっと気を張ってきた人。

そういう“がんばれる人”ほど、
気づかないうちに深く消耗していることがあります。

慢性疲労は、単なる体力不足だけではない


もちろん、疲労には睡眠や栄養、運動不足、体の使い方も関係します。
でも、休んでも戻らない慢性疲労には、それだけでは説明しきれないことがあります。

実際の臨床でも、

仕事も家のことも手を抜けない。
周りに迷惑をかけたくない。
自分が止まると全部が崩れる気がする。

そんなふうに、
長いあいだ緊張を抱えながら生きてきた方が、
「もう動けないわけではないけれど、ずっとしんどい」
という状態で来られることがあります。

表面上は動けている。
でもからだの内側では、回復が追いつかなくなっている。

そんな状態です。

がんばれる人に起こりやすいこと


責任感が強い人ほど、
からだが出している小さなサインを後回しにしやすくなります。

もう少しと無理をする。
まだ大丈夫と言い聞かせる。
しんどくても、やるべきことを優先する。

そうやって走り続けていると、
からだはずっと緊張したままになります。

呼吸が浅い。
肩や背中の力が抜けない。
寝ていても神経が休まりきらない。
胃腸まで張っていつも重たい。

この状態が続くと、
休んでいるつもりでも、本当の意味で休めていません。

だから、寝ても疲れが抜けない。
何もしていないのにだるい。
朝からすでにエネルギーが残っていない。

そんな感覚になっていきます。

臨床でよく見る「休めない人の疲れ」


以前猫の穴に来られた40代の女性のクライアントさんも、そうでした。

家のことも仕事もきちんとこなし、
周りからは「しっかりしている人」と見られていました。

でも、ご本人は
「朝からもう疲れている」
「休んでも全然回復した感じがしない」
「何とか動けるけれど、ずっと体が重たい」
と話されていました。

詳しくうかがうと、
昔から人に頼るのが苦手で、
自分で何でもやるのが当たり前になっていた方でした。

しんどくても無理をする。
人にも気を遣う。
期待に応えようとする。
でも、その積み重ねの中で、
ご本人の感覚はだんだん後回しになっていたのです。


こういう方は実際少なくありません。

慢性疲労の背景には、
単なる肉体疲労ではなく、
ずっとほどけないエンドレスな緊張の生き方
が見えてくることがあります。

疲れているのに、休めない


慢性疲労が長引くとき、
ただエネルギーが足りないというより、
回復するためのモードに入りにくくなっている
ことがよくあります。

からだがずっと警戒している。
神経が張りつめたまま。
休もうとしても、どこかで止まれない。

それは意志が弱いからではありません。

長いあいだ頑張ることで持ちこたえてきた人ほど、
“力を抜く”ことがわからなくなっていることがあるんです。

だから必要なのは、
もっと頑張ることではなく、
なぜ休めなくなっているのかを見ていくことです。

慢性疲労の奥にあるもの


慢性疲労の奥には、
こんなものが重なっていることがあります。

気を張りつめてきた時間。
言葉にしなかった感情。
「ちゃんとしていなければ」という思い込み。
止まることへの不安。
弱さを見せてはいけない感覚。

こうしたものは、目には見えません。

でも、呼吸や姿勢、睡眠の質、
そして休んでも戻らない感じとして、
からだに表れてきているのです。

つまり慢性疲労は、
からだだけの問題ではなく、
生き方の緊張がからだに残り続けた結果
として起きていると言えるかもしれません。

回復は、がんばることとは逆の方向から始まる


調子が悪くなったときほど、
がんばれる人はさらに頑張ろうとします。

でも、慢性的な疲れは
気合で押し戻せるものではありません。

必要なのは、少し立ち止まって、今の自分の状態を認めることです。

そして、
力を抜くこと。
人の手を借りること。
自分の感覚を置き去りにしないこと。


それは弱さではなく、
回復のために必要な力です。


この疲れには、理由がある


休んでも戻らない疲れには、
ちゃんと理由があります。

だからまずは、
自分を責めなくていいのだと思います。

がんばれることは、力です。
でも、ずっとそれだけで生きてきたなら、
からだが強制的にシャットダウン死してまう前に、
別の回復の仕方が必要なのかもしれません。

慢性疲労は、
ただの疲れではなく、
「もうこのままの頑張り方では続けられない」という
からだからの大きなサインでもあるからです。

その声を無視しないことが、
回復の始まりになるのだと思います。
編集者プロフィール
からだ道場【猫の穴】代表の
稲田 泰弘(いなだ やすひろ)です。

病院では「異常なし」と言われたけれど、
体や心のつらさが続いている。
その状態を、私は軽く扱いません。

からだ道場猫の穴では、
あなたの感覚を尊重します。
その上で、体と心の反応を一緒に確かめていきます。

このコラムは、
日々の現場や対話の中で感じてきたことを
ひとつの視点として綴っています。

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